筬矢トレーナーロングインタビュー
2026年よりU.G.Mトレーナー養成講座が開講されます。2025年の11月と12月にその概論が学べるOne dayセミナーが開講されますので、今回その特集として筬矢トレーナーのロングインタビューを行いました。
【目次(前編)】
■U.G.Mトレーニングは、どんなトレーニングですか?
■利重力身体操作法について
■抗重力と利重力という考え方
■一般的な他のトレーニング、筋トレと比べた時のU.G.Mの特徴は?
■アスリートに身体機能と運動機能をベースにしたアプローチをするとどんな可能性が高まるか?
■一般ユーザーに対して、U.G.Mトレーニングの効果はどんな特徴があるか?
【Q:U.G.Mトレーニングは、どんなトレーニングですか?】
U.G.Mというのは、Utilizing Gravity Movementの頭文字をとった言葉です。これは言葉の意味そのままで、「重力を利用した動作」という意味です。
通常、トレーニングというと、筋肉を太くしたり、筋力を向上させるために、ある筋肉をターゲットに負荷をかけ、力いっぱい抵抗するように行うトレーニングをイメージされると思います。
U.G.Mトレ―ニングはそれとは違って、「いきなり負荷に対して抵抗するのではなく、❝まず負荷を受け入れる❝という動作を基本としています。」
どういうことかと言うと、筋肉は収縮(短縮性収縮)することで、力を発揮し身体を動かしますが、U.G.Mトレーニングでは、筋肉が収縮して力を発揮する前に、一度、その筋肉に伸張刺激を入れます。
筋肉は自ら収縮することはできても、伸びることはできないので、トレーニングで扱う負荷を筋肉の伸張を引き出すための外力として受け入れるんです。これを動作のはじめに行います。
伸長された筋肉には張力(伸ばされることで生じる張る力)が生じるので、その張力によって負荷をある一定のポジションで支えたり、また、伸ばされたことで筋や腱に蓄えられる弾性エネルギー(弾んで元の状態に戻ろうとする力)や「伸張反射」といった反射作用を利用して負荷を跳ね返すようなイメージで動作を行います。
張力を利用した筋肉の活動では、発揮される力の大きさや速さなど、筋肉の作業効率上、多くの利点があり、これがスムーズかつパワフルな動作につながります。筋肉が効率的に力を発揮することができれば、無駄なエネルギーの消費を抑え、結果、持久力にもポジティブな影響を及ぼします。
このように、U.G.Mトレーニングでは、身体にかかる負荷を❝筋肉を伸ばす力として利用し、その張力による出力❞を高め、身体構造上、理に適った動作を身につけて行くんです。
私たち人間は地球上で生活している以上、常に❝重力❞による影響を受けています。つまり日常生活の動作やスポーツの動きでも、自身の体の重さにより❝重力❞といった負荷が常に身体にかかり続けているわけです。
通常、重力は、動くにしても、ただ立つにしても、抵抗する負荷と考えられるため、それに負けないように❝重力に抗うための筋力を鍛えましょう❞と言われます(抗重力筋トレーニング)。

U.G.Mでは、トレーニング動作に限らず、日常生活の動作や、アスリートであれば競技動作でも、いわゆる「重力という負荷」を抵抗する対象ではなく、むしろ筋肉の張力を引き出して効率よく力を発揮するために利用する負荷であると考えます。
そして、これを可能にするための姿勢や動作感覚を身に着けるためのトレーニングがU.G.Mトレーニングとなります。
【Q:利重力というかなり専門的なお話でしたが、重力を利用するトレーニングというのは一般的ではないのでしょうか?】
そうですね。ボディメイクを目的とした「レジスタンストレーニング(=筋トレ)」や、機能改善の目的で行われる、いわゆる「体幹トレーニング」、あるいは「抗重力筋トレーニング」といったものも、通常、重力という身体にかかる負荷に抵抗して力を発揮することで、筋肉を大きくしたり、その出力を高めるといったものですよね。
つまり、重力は身体にかかる負荷なので、それに負けないように「重力に抗うための筋力をつけましょう」というのが、一般的です。
実際に、「抗重力筋トレーニング」という言葉はよく知られていますが、「利重力筋トレーニング」というのはほとんどの方が聞いたことがないのではないでしょうか。
もしかしたら、同じような感覚を持ってトレーニングされている方もいらっしゃるかもしれませんが、「利重力身体操作法」、「利重力トレーニング」と言うように、❝重力を利用する❞ということを具体的な意識やイメージを持ってトレーニングされている方は、多くはないかもしれません。
身体に対する負荷の考え方は、一般的な「筋トレ」とは真逆と言ってもよいかもしれませんね。
【Q:私たちがよく知っている一般的な「筋トレ」とU.G.Mトレーニングの違いは他にもありますか?】
今、巷ではボディメイク系のトレーニングをはじめ、ピラティスとかヨガとかも含めれば、いろんなトレーニング方法があると思うんですね。
例えば、我々のトレーニングジムの世界で考えると、あえて大別するとしたら、一つは「ボディメイク系」で、もう一つは「機能改善系」になると思います。まず、カテゴライズするとすれば、U.G.Mトレーニングは、❝機能改善系のトレーニング❞になります。
ボディメイク系のトレーニングが一般的と言ってしまうと、語弊があるかもしれないのですが、トレーニングというとほとんどの方が、こちらをイメージされると思います。
私自身、「お仕事は何をされているんですか?」って聞かれた時に「トレーナーです」って言うと、大体、皆さん「ちょっとお腹締めたいんだけどね。」とか、「二の腕を引き締めたいんだけど、どうすればいいですか?」といったような質問をされつことが多いです。つまり、ほぼ、ボディメイク系の話になるんですね。
トレーニングは筋肉を鍛えて「カッコいいカラダをつくるもの」っていう認識が根強い。つまり、見た目をよくするもので、トレーニングで身体機能を高めるっていう認識は薄いように感じます。カラダの調子が悪くなったら、とりあえず病院みたいな認識が一般的ですよね。
機能改善のためにトレーニングに取り組まれていても、単に「筋肉をつけること」が機能改善につながると考えていらっしゃる方も非常に多いのではないでしょうか。もちろん筋肉をつけることは無駄と言うわけではないのですが、それだけではなく、取り組むべきポイントが他にもあるということです。
U.G.Mトレーニングでは、見た目を良くするためだけに筋肉を大きくしたり、動作を改善するにしても、その動きに関連する筋肉を単体で鍛えるといったようなことはしません。
U.G.Mで考える適切な動作でトレーニングを行えば、その動作に必要なだけの筋肉がバランスよく発達し、骨格の均整もとれ、姿勢も整って来ると考えています。
「ヨガ」や「ピラティス」といったものも機能改善系のエクササイズとして非常に人気がありますが、筋力や関節を意識的に細かくコントロールしながら動かすといった運動様式の点でU.G.Mとは異なります。
U.G.Mでは、筋肉や関節を意識的に細かくコントロールして動かすようなことはしません。
重力をはじめ、外力を適切な肢位や動作で受けることができれば、その力によって、関節が良い軌道で自然と動き、適切な部位の筋肉に張力が生じます。そして、その張力を利用して反射的な作用を活かした力の発揮ができれば、負荷を受けときと同じ良い軌道を通って、動作を切り返すことができる。
意識的な筋肉の活動や関節の動きのコントロールは、かえって❝力み❞といった筋肉の緊張を強め、生理的な反射作用を妨げ、スムーズな関節の動きや身体の連動性を崩し兼ねないと考えています。
「ある姿勢や動作を試みる場合、意識的に筋肉や骨の動きをコントロールしましょう」というようなアプローチではなく、身体にはたらく外力を無駄な力感なく、理想的な動作や部位で受けることができれば、生体に備わる反射作用や身体の連動がはたらきやすくなり、結果として、合理的に身体を動かせますよねっていうのがU.G.Mの考え方の特徴です。
U.G.Mトレーニングでは、能動的に動作をコントロールする能力より、外力を受ける際の❝受動的な動作感覚❞を高めていくとも言えるかも知れませんね。
【Q:では、U.G.Mはどういったことを求めてる方に一番マッチしそうですか?】
やっぱりアスリートですかね、、。
私もこれまで色々とスポーツをやってきて、学生時代には筋トレもたくさんやりました。
例えば、速く走りたくて、脚力を鍛えたり、脚が高く上がればストライドが伸びると思って「脚上げ腹筋(レッグレイズ)」をやったり、膝の屈伸力を鍛えるために大腿四頭筋やハムストリングスを鍛えたり、地面を蹴るのは最終的につま先だから、ふくらはぎの筋肉もたくさん鍛えました。
そうすると、確かに筋肉が付くし、トレーニングで扱える負荷も大きくなります。でも、実際に走ると遅くなっていたり、ステップも切りづらくなる。
気が付いたら怪我が多くなったっていうことが、本当に起こりました。
私が学生時代には、ラグビー部のウェイトトレーニングルームに筋トレの指南書があったので、それを見ながらトレーニングしました。
その通りに行うと、確かにそこに筋肉はつくんです。
でも、筋肉はつくけど明らかに「動きに繋がってない」ということをすごく感じていましたね。
【Q:興味深いですね。】
そうなんです。
その通りにやって体も変わってるんだけど、なんでこんなに走りにくいんだろう…、と。
筋肉はついてます。ボディメイクはできるんだけど、実際に競技に持っていくとなると、なぜか、つながらない。
そういった本に書かれている内容は、❝なになに筋の鍛え方❞のように、筋単体の強化の仕方を説明しているんですね。実際の競技の動きというのは、ある筋肉が単体で活動するといったものはほとんどなくて、複数の筋群が連動して動くんです。これが、筋単体を太く鍛えるといったトレーニングが動作を崩すひとつの要因です。
例えば、ボールを蹴るという動きにしても、じゃあ膝を伸ばす動きだけで蹴っているのかというとそうじゃなくて、その前に軸足の着地があったり、着地することによって地面の反力を受けるという力が働いていたりしますよね。
上半身を見ても、思いっきりボールを蹴ろうとする人が、腕を後ろにくんで足だけで蹴るというのは、まずあり得なくて。
腕を振るということは、必ず上半身と下半身の連動を利用している。こういったところが完全に無視されちゃっているんですよ。
つまり、動作が一度、横に置かれてしまっている。
ですから、一般的などこどこ筋をカッコよく鍛えるといった、いわゆるボディメイク系のトレーニングは、実際の動作の改善に直接つながらないケースが非常に多い。
人間は、通常、直立2足で立ち、重力を受けた状態で競技をやっています。
そういった重力の作用とか、重心の移動とか、身体の連動性をはたらかせて体を動かしてるわけで、そこをないがしろにして、いきなり「どこどこの筋肉が」とか「この動きは最終的にここを使っているからここを鍛えればOK」みたいな理屈は、機能改善を図るうえでは、ナンセンスなんです。
【Q:そのような知識がない一般の方やアスリートの人からすると、力をつけるためにその筋肉を鍛えようとしてしまうということですか?】
ジムなどのトレーニング施設では、最近はだいぶ認識が変わって来ていると感じますが、スポーツ指導の現場では、未だにこのような考えで強化トレーニングが行われていることをよく耳にします。
陥りやすいケースとしては、意識的に操作しやすい四肢末端部を必要以上に鍛えてしまうということです。
例えば、ボクシングでパンチ力を上げるのに、肘を伸ばす上腕頭三筋(二の腕の筋肉)を強化したり、野球のピッチング動作で、手首のスナップを強くするために前腕の筋肉を鍛えるといったようなことが上げられます。
こういったトレーニングをやり過ぎてしまうと、根幹部と末端部の力の伝達リズムや、身体の連動性を崩すことになりやすく、四肢末端部の負担が過度となり、ケガが増えるケースも少なくない。
【Q:それをアスリートの指導者さんたちが理解してないシーンも多いでしょうね。】
残念ながら、このようなことはよく耳にします。
よくあるのが、何かの競技のコーチをやられている方には、それなりに技術や実績がある方が少なくない。
その競技の技術的なこととか、ご自身の経験の話をお伝えするのは、確かにすごく意義のあることだとは思うんです。
ただ、身体の構造上、明らかに合理的ではないと感じる動作やトレーニングを指導されてしまっているケースもけっこうあって、それを修正させていただくと、「いや、でもこの競技はこういう動かし方でやるもんだから」、とか、「この部分の筋力は競技上、どうしても必要だから」といった答えが返って来る。
スポーツ指導の現場だと、技術的な指導に身体の構造を加味したアプローチがなかなか為されずらい、この両方ができるというのが理想だとは思うのですが、現実、簡単ではないかなと、、、。
私のところにもいろんな競技の選手が来られますけど、その競技の細かいことはわからないし、レベルが高くなるほど技術的なことは伝えられません。それは当然、各種目のコーチの方々の方がよっぽど良く分かっていらっしゃいますので、そちらにお任せすると。
そのうえで、人間の身体の構造上、「こういうふうに動かしていくと、関節に負担なくスムーズに動かせますよ」とか、「こういう動かし方をすると、効率的な出力形態を生み出せますよ」っていうところは、我々の専売特許というか、専門的なところになります。
ですので、その部分をジムで体感し、身に着けていただいて、各競技の練習に取り組んでいただくというのが理想的なカタチかなと思います。
【Q:お話しから想像がつきますね。】
例えば、現役時代に何かの種目で結果を残したコーチが「体感」として知り得たことを、その動きができない人に「こんな感じで」とかって説明したところで、訳がわからなかったりすることが多々あります。
そうすると、そこに❝理解の誤解❞が生まれる。
日々の練習のなかで、自然と身に付いた感覚的なものを理屈として説明することは結構難しいんですよ。
選手時代に輝かしい成績を残された方は、努力もさることながら、元々、動作感覚に優れている方も少なくない。
そういう方は理屈を知らなくても、ある程度、練習すれば自然とできるようになってしまったりする。
つまり、センスがあるということです。
そういった方の感覚を、それありきで説明をしたところで、できない人にとってみれば「全くその真意が伝わらない」ということが起る。
そのため、そこを補う必要が出て来るんです。
それこそが、我々トレーナーの仕事だと思っています。
うちに来られるスポーツ愛好家の方にも、「レッスンでコーチに言われたんだけど、こんなフォームで合ってますかね?」と質問されることがあります。
そんな時は、どのような動きで、どんな部位で身体にかかる負荷を受けているか、また、出力しているのかを見て、❝それが適切であれば、大丈夫ですよ❞。とお伝えしています。

こういった身体の構造に則った、基本的な負荷の受け方や出力の仕方といったものが横に置かれ、競技動作における、身体部位のポジションや、動作フォームといった、いわゆる❝カタチだけの修正❞を先行してしまうと、合う人には合うし、合わない人には合わないといったことが起る。
身体構造上、理に適った負荷の処理の仕方や出力ができれば、その精度を上げて行くなかで、身体部位のポジションやフォームといったものは、自然とカタチが定まって来るものだ考えています。
【Q:つまり、競技のパフォーマンスを上げるためには、その競技の練習だけではなく、それを支える体の機能を高めるトレーニングが不可欠だということでしょうか?】
はい、その通りです。
技術を習得し、パフォーマンスを上げて行くためには、土台として「身体機能」と「運動機能」を十分に高める必要があると考えています。
技術的なことは当然、大事です。
どんな競技でもレベルが高くなるほど、その重要性は明らかですよね。
でも、その技術を習得する上で、運動の土台となる「身体機能」や「運動機能」をどこまで高められているかということが、とても大切になるんです。
「身体機能」というのは、例えば筋肉の柔軟性や筋力、関節の動きやすさ、また心肺機能など、生体として充分に機能するための能力を指します。
一方、「運動機能」とは、「身体機能」を基に実際に運動を行う能力のことをいいます。これは、歩く、走るといった基本的な動作からスポーツ動作まで、実際に目的とする運動を円滑に、思いのままに行うための能力です。
U.G.Mトレーニングでは、主に❝筋肉の柔軟性や関節の可動性❞、❝神経筋協応能(神経と軟部組織(筋や腱など)の協調的な働き)❞といった「身体機能」を高めます。
そして、これを元に、重力をはじめ、身体にかかる負荷を適切な動作や身体部位で受け、筋の張力を利用した力の発揮により動作を行い、「運動機能」を向上させて行きます。
「身体機能」や「運動機能」が充分に充実した状態で、技術練習を行うことができれば、当然、良い結果は期待できます。しかし、そこが不足してしまうと、なかなかスムーズにパフォーマンスの向上につながりにくい。
そればかりか、場合によっては、頑張るほどケガを引き起こすといった状況にもなり得る。まあ、当たり前のことなんですが。
【Q:アスリートの成績がこれ以上伸びないという時に、身体機能と運動機能をベースにアプローチすると可能性が高まるのでしょうか?】
成績やパフォーマンスが上がらないとか、下がってしまったという時に、まず、本来、可動するべき部位がスムーズに動いているかを見ます。
関節の動きには筋肉や関節包などといった軟部組織が関わっていますが、これらの組織は、加齢や疲労、また「動作のクセ」などによって硬くなりやすいものです。これらが硬化してしまうと、関節の動きを制限し、スムーズな動作を妨げる要因となります。
組織が若く、身体機能が充実している時期は、多少の無理は効くものですが、キャリアを重ねて行くうちに、年齢、オーバーワーク、動作のクセなどといった要因により、回復が間に合わなくなり、徐々に軟部組織の柔軟性が失われて行く。
こうなると、スムーズな関節の動きや身体の連動性、体幹部からの大きな出力をうまく引き出せなくなり、機能的な動作が損なわれ、パフォーマンスが落ちて行く。
このようなことは、スポーツの世界ではよく見られるんですが、関節の可動性や身体の連動性、などといったものは徐々に変化して行くため、本人もなかなか気付きにくい。そうなると、パフォーマンスの低下を筋力によって補おうとする方向に行きやすいんです。
ただ、いわゆる❝筋トレ❞も考えもので、やり方を間違えると、より軟部組織の硬化を招き、スムーズな関節の動きを制限し、機能的な動作を崩し兼ねない。パフォーマンスの改善につながらないばかりか、逆にさらにパフォーマンスを下げ、故障を招く要因にもなり得る。
例えば、ゴルフのスイング動作では、体幹部は胸椎、下半身は両股関節が充分に回旋することで上半身と下半身の連動によって、身体が捻られ、大きな出力を引き出しやすくなます。
しかし、胸椎や股関節が硬くなり、可動域が制限されると腰椎を捻ることで、その動を代償することになります。でも、腰椎は構造上、もともと大きく捻ることができない。結果、腰を傷めてしまったり、いわゆる❝手打ち❞となり、腕を傷めたり、パフォーマンスが低下してしまう。
こういった場合、可動域が制限されている部位を本来のスムーズに動く状態に戻してあげればよく、それだけでパフォーマンスが戻ることもあります。
ただ、長期にわたり、身体の連動性や体幹部からの出力などが制限された状態で動き続けた結果、その動作が習慣化されてしまっている場合、負荷の処理の仕方や、出力の仕方、出力部位、出力タイミングなどについて、❝動作❞を構築し直す必要が生じる。
つまり、筋をはじめ軟部組織の柔軟性といった「身体機能」に加え、「運動機能」も改善しなければならないんです。
このあたりは、やっぱり専門的な分野になると思うので、それなりの動作理論を基に、それが見れるトレーナーのもと、トレーニングを行う必要が出て来ると思います。
技術的な問題の前に、まず本来可動するべき部分の可動性を取り戻すとか、その可動性からくる出力タイミングを再度、掴みなおすことが必要なんですね。
【Q:ではU.G.Mトレーニングの効果を一般ユーザーさんに向けるとするとどんな特徴がありますか?】
一般ユーザーの方は身体の不調を抱えていらっしゃる方もおられれば、30代、40代ぐらいまでは特に何もなく、健康や体力の維持増進という目的で来られている方もいらっしゃいます。
ただ50代、60代ぐらいになってくると、「長く歩くと膝が痛くなるんだよね。」とか、「台所仕事を長くやってると腰が重くなってきちゃって。」など大体何かしらの不調が出てきたりもします。
そして、「翌朝起きた時も痛みが抜けないんです」というケースが多いです。
そういったところも、一つはやっぱり体の使い方で、姿勢の崩れから出てきてるケースも多い。
そこは崩れた姿勢により、体の使い方、身体に対するストレスのかかり方が変化しているので、トレーニングで改善していく必要があります。
実際うちのジムもそういう一般の方、慢性的な痛みを改善したいとか、不調改善したいとかの方が結構多いですよね。
あとは今はなくても、予防としてある程度元気なうちからトレーニングをしていただくことはたくさんのメリットがあります。
慢性的な痛みも、ある程度のレベルまでいくとトレーニングだけでは改善するのに時間がかかってしまったりとか、むしろ、その痛みが邪魔して、本来この動きができると改善できるのになっていうケースもありますので。
そうなると、施術的なアプローチが必要になってきたりもしますね。できれば、どこも悪くない時から、トレーニングしていただくのが理想です。
本当はだんだん姿勢が崩れてきてしまったりとか、年齢を重ねていく中で組織の水分量が減って硬くなってしまうというようなことが誰にでも起こることなので、そこをトレーニングで常に循環を良くして、みずみずしい状態、体の細胞の若々しい状態を保っていくということが大事です。
あとは、どのうような考え方で機能改善に臨むかということも大事ですね。
例えば、慢性的に膝が痛むといった場合、膝の荷重を支える大腿四頭筋(太もも前の筋肉)を強く鍛えなきゃといった考え方ではなく、むしろ、逆にハムストリングス(太もも裏の筋肉)や殿筋(お尻の筋肉)といった裏側の筋肉を柔軟に鍛え、その張力を使うことで、膝で体重を支える感覚を股間節で支える感覚に変えて行く。
慢性的な膝痛の場合、大腿四頭筋を使い過ぎてしまっているが故に、膝のストレスを強めてしまっているケースが実は非常に多いです。
U.G.Mトレーニングは、不調箇所を強化するというよりも、なぜ、そこに負担がかかってしまうのかを見て、そのストレスを強めてしまっている要因と考えられる動作を改善するといったアプローチをしていきます。

【Q:U.G.Mトレーニングは、アスリートと一般の方とアプローチが2通りありますね。】
そうですね。
ただ、「求めていきたい身体の状態」というのはアスリートであろうが一般の方であろうが基本一緒です。
もちろん、トレーニングでの強度やトレーニング種目など、そういった部分の違いはありますが、例えば「こういう姿勢を取ることができれば、すごく楽に立つことができますよ」とか、「歩行でも、こういうような着地の仕方、連動のさせ方をすると楽に歩けますよ」というのは、これはもう一般の方でも、アスリートの方でも、動作を行う上では全く一緒なんです。
一般の方なんかはやっぱり日常生活が楽になるし、動作が楽になるし、アスリートの人は体の動かし方が良くなって合理的な体の動かし方ができるようになれば、疲労しづらくなり、練習もいっぱいできるだろうし、怪我も少なくなります。
【〜後編へ続く〜】