重力を利用した力の使い方や動作
実は、これは一流アスリートだけではなく、幼児期には、誰もが自然にできていたものだと考えられます。
幼児期の3,4歳までは腕や脚など四肢末端部の筋肉は未発達で非力です。
それでも、立ち上がったり、元気に動き回ることができます。
どうしてでしょうか…?
それは、四肢末端部の筋力で重力に抵抗しているのではなく、体幹部で受け、それにより伸ばされた体幹部筋群の張力を利用しているからだと考えられます。
上肢(手・腕)にかかった負荷は鎖骨・肩甲骨の連動を介して体幹部へ、下肢(足・脚)にかかった負荷は股関節で受けることで骨盤を介して体幹部へ伝えているのです。
そして、それによって得られる体幹部からの大きな反力を引き出せていると考えられます。
筋肉には伸ばされることで、張る力、つまり「張力」が生じます。
ゴムチューブの両端を引っ張るとピンと張りますが、筋肉も伸ばされることで、その張力により関節を固定したり、伸ばされた反力により効率的に力を発揮することができます。
幼児の筋肉はとても柔軟性に富んでいます。
そのため重力をはじめ、外からかかる力を受けることで伸張されやすく、伸ばされた筋肉の張力を利用しやすいのです。
さらに四肢末端ではなく体幹部の大きな筋肉の張力が利用されるため、強い力を引き出すことができ、非力な腕や脚の筋力に頼らずとも十分に身体を支えたり、移動することができるのです。
しかしながら、このような合理的な力の使い方は成長するにつれ、失われてしまいやすいものでもあります。
そのため、スポーツでは同じ練習をしていてもスムーズに上達できる人と、なかなか上達できない人の差が出てきます。
重力を利用した体幹部の使い方ができる人は理に適った動作で楽に強い力が出せるため、省エネで疲れにくく、疲労から生じるケガも少なくなります。
当然、たくさん練習を積むことができるので、早く上達して行きます。
では何故、幼児期にできていた効率的な力の使い方を見失ってしまうのか…?