今回は「胸腰椎移行部の伸展」が「肩甲骨の下方回旋」と連動する仕組みについてお話して行きます。
肩甲骨は肩関節で腕とつながるため、肩の位置をやや後方に引くことで、腕の重さによって肩甲骨は下方に引き下げられ、それに連動して鎖骨は後方に開きます。
この鎖骨の動きが伴うことで、肩甲骨は真下ではなく、背骨に向かって斜め内側下方に下がるため、腕にはたらく重力を受けるだけで肩甲骨の位置は下方回旋の方向に向かいます。
肩甲骨は、肋骨の前面で「小胸筋(しょうきょうきん)」と、肋骨の外側で「前鋸筋(ぜんきょきん)」といった筋肉とつながるため、「肩甲骨の下方回旋」によって、これらの筋肉にストレッチがかかり、その張力により肋骨は適度に開かれます。
肋骨は胸の中央で胸骨と、背中の中央で胸椎とつながり、胸郭(きょうかく)という骨格によるカゴ様構造を作ります。
この構造から、肋骨が開くと、胸骨は斜め上方に引き上げられ、胸椎は前方に押し出されて胸郭が拡大します。
そして、この胸椎が前方へ押し出される動き、つまり❝背骨が反る動き❞を「胸椎の伸展」と言います。
しかし、胸椎は生理的後弯といって、元々丸まっているため、胸椎全体が大きく伸展するわけではありません。
多少、個人差はありますが、通常、上から6番目までの上部の胸椎は後弯を強めており、また、各椎骨の後部にある棘突起(きょくとっき)といった骨の出っ張りも、斜め下方に長く伸びて屋根瓦のように重なっているため、棘突起がぶつかってしまい、大きく伸展することができないのです。
この胸椎の生理的後弯が緩むのが第7胸椎以降となります。
そして下位の胸椎ほど後弯の角度を緩め、棘突起も短くなり、その方向も斜め下方から水平方向へと徐々に変化して行きます。
そのため、下位の胸椎では棘突起による可動域制限もなくなり、伸展方向への動きが行いやすくなるのです。
この傾向は胸椎の最下部である第11、第12胸椎、つまり胸腰椎移行部において最も顕著となります。
前回のブログでお話した通り、第11、第12胸椎の間には肋骨は挟まっていません。また肋骨と横突起とのつながりもないことから、その動きは肋骨による制限を受けません。
さらに、この部分は胸郭の構成にも関与しないことで、骨格の構造による可動域の制限からも解放されています。
この様に体幹部の筋肉の柔軟性が確保されていれば、骨格の構造上、胸腰椎移行部が最も伸展されやすい部分となり、「肩甲骨の下方回旋」によって胸郭が拡大することで、「胸腰椎移行部の伸展」が自動的に連動して行くのです。