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#14 骨盤の前傾 〜正しい姿勢を作るためのポイント〜

U.G.M.(利重力身体操作法)的正しい姿勢を作るためのポイントとして、①「肩甲骨の下方回旋」、②「胸腰椎移行部の伸展」についてお話してきましたが、最後は③「骨盤の前傾」になります。
 

骨盤は腰椎の下方に続く仙骨と、その両側で強靭な靭帯(じんたい)によってつながる左右の寛骨(腸骨+恥骨+坐骨)で構成されています。この仙骨と寛骨との接合部を仙腸関節(せんちょうかんせつ)といいます。

これは骨盤が前傾することで、骨盤以下の各関節の適合性が高まり、骨格的に安定しやすくなることがその理由のひとつです。

関節が安定したポジションに収まることができれば、姿勢を保持するために無駄な筋力を必要とせずリラックスした状態が維持されやすくなるため、日常生活が楽になったり、スポーツ動作もスムーズに行うことができるようになります。

 骨盤が前傾すると腰椎に続く仙骨も前方に傾斜します。この仙骨の前傾を「ニューテーション」といい、仙腸関節を安定させるため、骨盤の歪みなども生じにくくなります。


 寛骨の外側には寛骨臼(かんこつきゅう)というくぼみがあり、ここに太ももの骨の先端である大腿骨頭(だいたいこっとう)がはまり、股関節を形成しています。

寛骨臼のくぼみは前方が浅く、後方が深くなっていることから、骨盤が前傾すると、寛骨臼の深い部分に大腿骨頭がはまり、被覆率(ひふくりつ)が上がるため、股関節の安定性も高まります。

 股関節の下方に続く膝関節は、立位において、伸展した状態が最も安定性の高い肢位となります。

関節の構造上、膝が伸びる際は大腿骨(太ももの骨)が内側へ捻れる動き(内旋)が必要となりますが、大腿骨は骨盤の前傾に連動して内旋するため、骨盤が前傾することで、膝はスムーズに伸展しやすくなるのです。

この場合、太ももの前の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の力(収縮力)で、努力して膝を伸ばしているのではなく、骨格の構造による骨盤前傾からの下行性の運動連鎖によって、自然に生じた膝関節の伸展となります。そのため、大腿四頭筋の筋疲労や、その持続的な収縮力による膝関節への圧縮ストレスもなく、楽に安定して立つことができます。

 このように、大腿骨の内旋を伴いながら膝が伸展することで、膝関節は捻じれるため、膝関節で大腿骨の下に位置する脛骨(脛の骨)は大腿骨に対して反対方向に回旋した位置(外旋位)となり、結果、大腿骨と共に内側に向かうのでなく、正面を向く傾向となります(中間位)。これをスクリューホームムーブメント(終末強制回旋運動)と言います。

 スクリューホームムーブメントによって、生じた膝関節の捻じれは、膝の安定性に関与する主要な靭帯をバランスよく張ってくれるため、靭帯の作用による関節の支持力も高まります。

そして脛骨の位置が中間位となることで、その下に続く距腿関節(きょたいかんせつ)や距骨下関節(きょこつかかんせつ)といった足首まわりの関節も安定し、足の位置もつま先の方向が極端に内・外側に偏ることがなくなります。

 一方で、「骨盤の前傾」は腰椎の過伸展、つまり「反り腰」を引き起こしやすく、腰の負担が増強するといった理由から否定的な考えもあります。

 次回は、骨盤前傾位において、腰へのストレスを回避するためのポイントについて解説して行きます。

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