「猫背」の姿勢では、胸椎全体が一様に後弯を強めているため、上下に続く頸椎や腰椎にもその影響が及びます。
頸椎と腰椎は元々、前方に凸のカーブ、すなわち生理的な前弯を持ちますが、胸椎の後弯(後方へのカーブ)が一様に強まると、その流れに沿うように頸椎も生理的な前弯を崩し、前方へと傾きます。
すると、その上に乗る頭の位置も前方に突出するため、「ストレートネック」、「フォワードヘッド」といった姿勢が出来上がります。
この状態では、下方に倒れ落ちようとする頭の重さを常に首や肩の筋力で吊り上げなければいけなくなるため、筋肉は疲労し、凝り固まり、首・肩の不調を来す原因となります。これは長時間のデスクワークやスマホ操作などでも陥りやすい姿勢です。
一方、腰椎も頸椎と同じ理由で生理的な前弯が崩れ、後弯の方向へカーブが切り替わります。
そうなると、腰椎への圧迫ストレスが高まり、ヘルニアや椎骨の圧迫骨折を来す要因にもなります。
また、お腹は常に縮んだ状態となるため、腹筋も短縮して固まる傾向となります。
腰の下には骨盤が続きますが、腰椎が後弯してしまうと骨盤は後傾の方向へ傾きます。
お尻は下方に落ち込み、膝はやや前方へ曲がるため、お尻や太もも裏の筋肉は常に短縮した状態となり、伸張性を失なっていきます。
一方、太ももの前の筋肉も膝が前方へ倒れ過ぎてしまわないよう、常に、筋力でその角度を維持しなければいけなくなるため、疲労して凝り固まります。
つまり、骨盤が後傾してしまうと、太ももの筋肉の全体が硬くなり、その機能が失われてしまいやすいのです。
太ももの筋肉は、前側も後ろ側も膝関節をまたいで脛の骨に付いているため、この筋肉が硬くなると、その緊張に締め付けられるように膝へのストレスも過剰となります。
この膝へのストレスを回避するため、膝を伸ばそうとすると、骨盤が後傾したまま前方へ突き出ます。
この姿勢は「スウェイバック」と言われ、股関節の前側は常に突っ張るような負荷がかかり、股関節の前側に位置する筋肉や靭帯などの組織に過度な伸張ストレスがかかります。
また腰を起点に上半身が後方へ下がるため、結果的に腰が反りかえった状態、いわゆる「反り腰」となりやすく、腰部にかかる負担は著しく高まります。
このように、体幹部がうまく使えなくなると、体幹の多くの筋肉が硬く短縮し、その筋肉に骨が引っ張られることで関節が本来あるべき位置からずれてしまい、姿勢が崩れて行くのです。
そのため、トレケアでは、重力を利用した体幹部の使い方ができているかどうかを見る時、その方の「姿勢」を一つの指標としています。U.G.M.(利重力身体操作法)的視点での「正しい姿勢」が取れていれば、人によって精度の差はあれ、体幹部筋群の張力を上手く引き出せていると考えています。
では、U.G.M.(利重力身体操作法)で言う「正しい姿勢」とは、いったいどのような状態を言うなのか、次回お話していきたいと思います。